高齢者の転倒に注意

バランス能力とは、環境の変化に関する姿勢を保とうとする能力であり、止まっている時・動いている時の姿勢を任意の状態に保つ、また、不安定な姿勢から速やかに回復させる能力のことをいいます。

そのため、神経系や筋骨格系などの身体の多くの要素が関与し、この能力が低下すると高齢者の転倒の原因になります。

この能力を測定する検査法はいくつかありますが、今回は信頼性と妥当性があり、検査方法が簡便で、容易に検査することができるファンクショナルリーチテストをご紹介します。

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1 ファンクショナルリーチテストとは
2 検査方法について
2.0.1 注意点について
3 終わりに
ファンクショナルリーチテストとは

随意的に重心を制御しようとする動的な制御能力によって立位バランス を測 定する簡便かつ定量的な検査であり、立位で拳上した上肢をできるだけ遠くに伸ばしたときの、上肢到達距離を測定します。

この検査と転倒との関係が研究され上肢到達距離が15.3cm未満の高齢者では、転倒の危険性が高いとされています 。同年代では女性よりも男性の上肢到達距離が大きく、年齢が増加するにつれて上肢到達距離が減少します。

上肢到達距離(cm) 上肢到達距離(cm)
年齢 男性 女性
20~ 40 42.4± 4.8 374± 5.6
41~69 378± 5.6 35.1± 56
70~97 33.5± 41 26.9± 8.9
検査方法について

検査方法は、以下のようになります。

自然な開脚立位で、利き手の肩関節を90°拳上し、手指を軽く握り、中指末端を測定点とします。
足部を動かさないように、できるだけ遠くで手を伸ばすように指示します。このとき体幹の回旋を伴ってもよいですが、踵を浮上に注意する必要があります。
数回の試行のなかで最大到達距離(cm)を記録します。
注意点について

検査中に手を伸ばした方向への転倒のリスクが高くなるので、転倒させないよ うに注意しましょう。立位をとることができない対象者に対しては、座位で、前後への上肢到達位を測定します。

終わりに

ファンクショナルリーチテストは、高齢者だけではなく脳血管疾患などの様々疾患にも利用されています。バランス検査は転倒の危険性が高くなりますので、充分注意して行ってください。